2019/08/09
東京工業大学の7月16日付ホームページによると、同大学 科学技術創成研究院 先導原子力研究所の島田幹男助教と松本義久准教授、科学技術創成研究院 未来産業技術研究所の沖野晃俊准教授、大学院総合理工学研究科の三宅大学院生らの研究グループは、iPS細胞から皮膚ケラチノサイト(皮膚角化細胞=表皮に存在する細胞の95%を占める)を作製し、皮膚における放射線の生体影響を明らかにした。これは、iPS細胞から作製した皮膚ケラチノサイトにおける基礎的な放射線応答を解析した最初のケースで、がんや老化のメカニズム解明だけでなく、放射線治療における皮膚防護剤や皮膚疾患の治療薬、化粧品の開発などにも役立つことから、様々な分野への波及効果が期待されている。
生体では常に内因性、外因性のストレスによりデオキシリボ核酸(DNA)損傷が生じ、それらは生体に備わっているDNA修復機構によって修復されるが、修復しきれなかった損傷は蓄積し、細胞のがん化、老化につながる。特に皮膚表皮においては、表皮基底層に存在する幹細胞、前駆細胞が放射線による影響を受けやすいとされる。今回の研究は、iPS細胞から作製した皮膚ケラチノサイトを用いて幹細胞、前駆細胞などの分化度の違いによる放射線応答の違いを明らかにした。研究成果は米国放射線腫瘍学会誌「International Journal of Radiation Oncology Biology Physics」電子版(5月11日)に掲載された。